明日に向かって

なんでマーチングJは「明日に向かって」ってキャッチフレーズを謳っているのに誰も「明日に向かって」を歌わないんだろう、と思っています(わたしが知らないだけでどこでやってるのかもしれませんが)。そこと連動してるとは聞かされてないのになぜかJUMPコンに入場する際渡された、妙にしっかりした作りのフラッグにもはっきり書いてあるのに!あのコーナーで貴重なJUMPの出演部分がなんや漠然としたものになるんだったらせめて「明日に向かって」を歌えばいいのに!!と、今さらながら言いたくなります。
と思っていたら今日の松本くんのラジオでかかりました(リスナーのリクエストで、特に松本くんのコメントはなし)。
やっぱりアイドルの曲かくあるべし!!!と思いました。あの曲はアイドルが歌うべき曲!!ジュニアをあらん限りにわっさりつけて歌って踊るべき曲!!!と改めて思いました。


明日に向かって」は、わたしが「アイドルが歌うってすごいことだ!」とはじめて感服した思い出深い曲です。
わたしが嵐にはまった時、ちょうどスッピンアラシ(嵐の1stツアーのライブビデオ)が出たばかりの頃で、ジャニーズのコンサートというものがどんなものかまったく知らなかったわたしはそれを見て、そのあまりの煌びやかさとエンターテインメント性に圧倒されました。ひと夏それをリピりまくって過ごしました。そのコンサートのアンコールの1曲目が「明日に向かって」でした。嵐さんはフライングしながら歌っていました。
それを見て、陳腐なメッセージもアイドルが歌うとなんて感動的なんだ!!!と衝撃を受けました。
わたしはそれまで応援歌というものが大っ嫌いでした。やたら人を励ます歌や、挫けても前を向いて歩いていこうぜ的なメッセージのある歌を聴くと「おめえに言われたくねえよ!!!」と本当に不愉快な気分になっていました。根拠もなく人を応援するとか偽善的だし不遜だと思っていました。
しかし、「明日に向かって」を見て、前向きなメッセージが心に染みいる!と思いました。はじめての感覚でした。それは、曲や歌詞そのものが染みたわけではなく、アイドルが歌うからこそ染みたわけです。アイドルってすごい!!!アイドルがアイドルポップスを歌うってすごい!!!と感動しました。
明日に向かって」は、キャッチーなメロディに明るく前向きでちょっとかわいらしい歌詞のついた、いかにも10代アイドルの歌いそうなポップスです。楽しいかんじではありますが、ありふれた言葉が並んで、あまり陰影を感じる歌ではありません。
しかしそれをキラキラしたアイドルが歌うことによって陰影が生まれる!!!空虚な歌詞がアイドルの口から出ることによって説得力を持つ!!!
いるだけで圧倒的な輝きを放つキラキラした少年たちが、キラキラした衣装を身にまといキラキラした照明がまばゆいステージ上でキラキラした明るい歌を歌う。そこには明るい光しかありません。光が明るいほど闇は暗くなるものです。そこがこの上なく明るいところなら、きっとその光の当たらないところの暗さはこの上なく暗いものでしょう。多分彼らはその闇の濃さを知っている。そのきらめきの中に深い闇を内包してる、だからこそステージの上であんなにも輝くのだ。そう感じました。
その時点でそれまでのジュニア事情とかほとんど知らないわたしでも、嵐が必ずしも本人たちの望んだ形の未来でなかったことはわかったし、見た感じ吹けば飛びそうに弱々しく頼りない印象がありました。その弱々しい嵐が、それでも何とか自分たちでこの場を達成しなければいけないと、何とかしていこうというぎりぎりのところで踏ん張っているのはすごく強く伝わりました。その彼らが「明日に向かって生きて行こうよ」と歌うから、そのばかばかしい歌詞がメッセージとして説得力を持ちます。あまりの明るさがせつなくて、それがいっそう曲に拡がりを与えます。そういう、いろいろな文脈を飲み込んで曲の価値がアイドルの価値がお互いに増幅していくということに感動したし、本当におもしろいと思いました。


というわけで「明日に向かって」が好きなのです。アイドルにはああいう歌を歌ってほしいと思います。
陳腐で空虚なメッセージを明るくキャッチーなメロディに乗せて歌うことで意味を持たせてほしい。お仕着せのものを、パフォーマンスをすることによって自分のものにしてほしい。そしてばかばかしいほどのきらめきで圧倒させてほしい。それがわたしがアイドルに望むことです。