鶴の一声の功罪

ジャニーズのグループができる時の、本人の意向一切無視の社長の鶴の一声システムっておもしろいなあってずっと思ってました。バレーユニがその傾向が顕著ですが、それ以外もたいていのグループが「思えばいろんなことがありました」という経緯を経て出来上がっていきますよね。時に残酷なことになるけど、それを内包してるからこそおもしろいとずっと思ってました。嵐は過半数の3人がジャニーズやめようと思っていたところで、そんな意向は無視して結成されたグループです。それは傍目にも何となく伝わりました。そこから、気を取り直してアイドルとして仕事して、このグループでやっていこうという方向に向かっていった、「嵐でよかった」って本人たちが思えるグループになっていった、その過程が見ていて本当におもしろかったので、わたしはその鶴の一声システムに肯定的でした。でも今回の件があって、それにはやっぱり罪深い面があると思いました。
ということに関する雑感です。着地点はないです。


森本くんの件に関して「あんなことするなんてプロ意識ない」みたいな意見を見かけたんです。言ってしまえば確かにそうです。ですが、それに違和感を感じました。プロ意識ないという批判は、プロとしてやっていこうという意志のある人に向けて言うものだからです。前からぼんやりとずっと思ってきたのですが、そもそも森本くんはプロとしてやっていく意志があったのでしょうか?批判でも何でもなく、心配に近い感じで何となく思ってました。プロに「させられた」という側面も大きいように感じていました。
その前も3年くらいジュニアとしてキャリアがあるわけなので、こういう仕事が嫌いなわけではないでしょうが、なにせグループ結成時は小学生です。プロとしてやっていく覚悟のもとに仕事をしていたとは思えないし、何らかの意志確認をしてからデビューが決まったとも思えません。そういう状態で、デビューという責任の重い仕事を任せられるのはやっぱりきつかったのかなと思います。しかもひとりだけ年が下で、いちばん近くても2こ上で、10代前半の2才差って20代過ぎの10才違いよりも差があるし、人数も多くてグループとしても順調な活動ばかりではない中他の子も自分のことに必死で、なかなか辛い状況だったと想像つきます。そこで何らかのモチベーションを持ってプロ意識の下に活動しろといってもそれはかなり難しいことでしょう。
わたしは特に森本くんのファンであったわけではないので的外れな感想かもしれませんけど、そんなことは前からぼんやり思ってました。現場で森本くんの態度を見て正直「やる気あんのかよ!?」って思うことが度々あったんですけど、状況を考えるとまあしょうがないかなーとも思っていたりもしました。
だからああいうことしてもいいというわけではまったくないし、アイドルだろうがそうでなかろうが法律違反はいけませんけど、「プロ意識ない」って責めるのは酷かなと思います。
そしてこれもぼんやりと感じていたんですけど、最近のJUMPのダンスがあれほど揃っているということは森本くんもいっしょけんめい練習してるはずで、ということはモチベーション的にも変わってきたのかなと思っていました。もしそうだとしたら、そういうタイミングでこういうことになるのは余計に過酷ですよね。
なんやわからずデビューして、やっとその重みに追いつこうとした矢先に、自分の不注意と不心得が原因とはいえ、他人の悪意と裏切りによってこうやって重い結果を招く事態になって、自分以外のメンバーも巻き込んでしまって、その状況は16才にはものすごく辛いと思います。高1なんて、やっとアルバイトして自分でお金稼ぐことができるようになりはじめる年令なのに。本人の責任ももちろんありますが、課されるペナルティが行為に比べて重すぎてかわいそうな気がします。
それも鶴の一声デビューシステムが発端かなと思うと、その功罪について考えてしまいます。当たり前だけど人生を大きく左右しますから。年が若ければ若いほど影響力は深刻になります。手にするものが大きいですが、それだけリスクもやっぱり大きい。それはファンがどうこうできる問題ではないんですが、罪深さも大きいと改めて思います。
そしてそこには、それを喜ぶファンも少し加担してるのかなとかちょっと思ったりもします。やる気なくても最初はグループになじめなくても、そこから何らかの方法で意志を持って活動するようになってほしい、グループを自分の場所にしてほしい、わたしもユニ担だった時はそう思っていました。でもきっとそれはファンのエゴというものでしょう。自分の欲求を満たす方向に進んでほしいというのは大人のわがままなんだと思います。アイドルに夢を見るのはある意味押し付けです。アイドルを楽しむことは、そういう押し付けを孕んでいるということを考えてしまいます。
それを考えると、そもそも年端もいかない少年たちが芸してるのを大人が喜んで見るという構図のグロテスクさはどうなんだという問題になってきますが。それはアイドルヲタの原罪みたいなものなので難しい問題です。


どこの近所のおばちゃんだよという意見を言わせてもらうと、森本くんにはきちんとした食生活と、最低限の一般教養を身につけてほしいです。この先どんな道を選ぶにしろ、それはどうしたって必要なことです。心の底から大きなお世話でしょうが、そこがあまりにも欠けていると心配していました。あと、信頼できる友だちがいればいいなと、そう思います。メンバーは仕事仲間という性質を持つ以上ある程度の緊張感が存在してしまうから、もちろんメンバーも善き存在であってほしいと思いますけど、それ以外で安心できて信頼できる友だちがひとりでもいればいいなと思います。
健やかな未来を願います。でもその願いもエゴなのかもしれません。